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例えばこんな日常

第25章 君が好きだと叫びたい/SO






チャイムが鳴ると同時に駆けてきたのは元気の良い弾んだ声。


「大ちゃん大ちゃん!今日は俺だよねっ?」


弁当箱片手に期待に満ちた瞳を向けてくる相葉くんは、すぐに俺の前の席を陣取った。


思わずふふっと笑みを溢し、近付いてくるにぎやかな声に目を向ける。


「も~、まず昼飯食わせてやれってば。
時間いっぱいあんだからさ」

「あ、相葉くん悪いけどパン買ってきて」

「ふざけんな自分で行けっ」


ガタガタと椅子を移動しながらぼやく二宮くんに、半笑いで相葉くんをパシろうとする松本くん。


「ね、今日は俺描いてくれんだよね?」


瞳を輝かせてずいっと身を乗り出す仕草にはいつまで経っても慣れないけれど。


「うん…今日は相葉くんね」


笑いながらスケッチブックを見せれば、やったー!と言いながらいそいそと弁当箱を開けだして。



櫻井くんに俺の絵を見てもらった日から。


昼休みにみんなの似顔絵を描くのが日課になり。


今まで誰かに自分の絵を見てもらったことなんて一度もなかった。


それがあの日…


まさか、一番最初に自分の絵を見せることになったのが櫻井くんだとは夢にも思わなかったけれど。


それにあんなに嬉しい言葉ももらって。


"智はもっと自分に自信持ったほうがいいって。
こんなすげー特技あること黙ってるなんて勿体ないよ"


涙が落ち着いてきた頃に優しく掛けてくれたその言葉。


今まで否定されることのほうが多かった俺の人生で、これほどまでに自分を認めてくれた人は居なくて。


しかもそれが、恋焦がれている相手だなんて。


勝手に線を引こうとしていた俺を、殻に閉じこもってしまおうとしていた俺を。


手を引っ張って救い出してくれたのは、他でもない櫻井くんだった。

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