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例えばこんな日常

第28章 ピンクの酔いどれカウボーイ/AN






少しの不安と大きな期待。


今日のにのならきっと大丈夫。


そう信じて脱衣所に忍ばせておいた例のもの。


テレビに目を向けつつも期待でソワソワしちゃって内容なんかまるで入ってこない。


基本的ににのは可愛いんだけどさ。


エッチの時は更に可愛くなる。


そして更に酔ったままの時は最高に可愛くて。


でも仮に今日みたいなアクシデントがあってもアレがあれば。


アレを着てくれれば酔いが醒めたって構わない。


あんな無敵の飛び道具があるの忘れてたわ…


よく思い出した、俺!


「…ねぇ」


カチャと控え目にドアが開いたと同時に聞こえた小さな声。


顔だけ覗かせたその表情は明らかに恥ずかしそうにしていて。


よしっ!もらった!


「…これしかなかったんですけど」

「にのっ!うわやっべ、どうしたのそれ!」

「どうしたじゃないのよ、服どこやったんだって」

「やっぱ可愛いなぁ…はぁ堪んない」


駆け寄ったにのは目論見通りピンクのパーカーを着てくれていて。


脱衣所に置いてあった服は全部持ってったからこのパーカーしか着てないはず。


酔っぱらった余韻か風呂上がりだからか、顔やら太腿やら見えるところ全てほのかにピンクに染まったにの。


一通り拝んでからぎゅうっと抱き締めれば、口では文句を言いつつもやっぱり抵抗はない。


「可愛い、にの…」

「…も、いいって…」

「ん?」

「いいからさ…」


抱き潰すように密着した体が心地悪そうに離れて。


けれど萌え袖の両手は俺の腰に回されたまま、洗いざらした前髪の隙間から覗いた瞳が俺を見上げ。


「…いこ、早く」


…あれ?


ちょっと待って。あれ?


こいつ…


もしかして酔い醒めてない…?


この口振りと赤く染まった目元。


おまけに強烈な色気。


…まさか。


まさかのサービスタイム続行…!


心の中で会心のガッツポーズ。


「くふ…分かった、行こっか」


余裕のフリして指の背で頬を撫でてやれば、きゅるんと瞳を潤ませた。


腰に回されていた萌え袖を取るとぎゅっと握り返してきて。


黙ってついてくるそんな仕草にもいちいち心臓を鷲掴みにされる。


ヤバい、俺…


今日は余裕ないかも。

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