例えばこんな日常
第7章 99.9%難しい恋/MO
「あ、初めまして。
斑目法律事務所から来ました深山大翔です。
今日からこちらの顧問弁護士になり、」
「クビだっ!」
「え?」
「勝手に入ってなんだお前は!
今すぐこっから出てけ!」
睨みつけながら頭のてっぺんからつま先まで、ジロジロと視線を送る。
なんなんだコイツはっ…!
ヘラヘラして見るからに頭の悪そうな顔して…
地味なスーツにリュック背負って…
あ、耳ほじってやがる。
こんなヤツが弁護士か?
どっかの就活生の間違いじゃないか!?
「っ!深山先生!もうお見えだったんですか!?」
慌てた顔の村沖が入ってきて、俺とソイツとの微妙な空気を察した。
「…社長、こちら斑目法律事務所の、」
「クービーだ。こんな無礼なヤツあり得ない」
「っ、社長!」
ソイツを指差して言うと、村沖がまた慌てて俺に駆け寄る。
「社長、いくら何でも早すぎます。
前回の方は一週間と経たずに契約終了の申し出を受けましたが…まだ深山先生にはお会いして数分しか経っていないじゃありませんか」
「時間の問題を言ってるんじゃない!
見ず知らずのくせに勝手に人の部屋に入って、
それに約束の時間より随分早いじゃないか!」
「それ時間の問題ですよね?」
後ろからポツリと発したソイツは、どこか楽しそうに俺たちのやり取りに割って入った。
「っ、そう言うことを言ってるんじゃない!」
「社長は時間に厳しい方と聞いてましたので、
遅れないように早めに来たんですけど…」
頭をポリと掻きながら窺うような目で続ける。
「僕、クビですか?」
それだ。
さっきからその、人をおちょくるような顔がどうも気に入らない。
「…ああクビ、」
「あ、ちょっとすみません」
俺の言葉を遮ってポケットからスマホを取りだすと、普通に電話に出やがった。