例えばこんな日常
第7章 99.9%難しい恋/MO
…なんなんだコイツはっ!
どこまで無礼なんだっ…!
「…はい、ええ。
いや、なんか僕クビって言われたんですけど。
え?だってそれは佐田先生の専門でしょ?」
俺のことを気にも留めずに話し続けるヤツを睨んで同じく村沖を睨むと、きゅっと口を結んでゆっくり頷いた。
ふん…
村沖が何と言おうと、絶対クビだからなこんなヤツ!
「…なるほどねえ。
それなら分かりました。
もうちょっと粘ってみます、はい」
ようやく電話を切ったヤツにもう一度クビを告げようと詰め寄ると、振り返ったその顔があまりに近すぎて一瞬たじろいだ。
「あのー…わかりやすく伝えますね?
前任だった顧問弁護士はうちの所長と旧知の仲でして、今回うちに後任を依頼してきたのもその弁護士みたいで」
淡々とした口調なのにやけに目力が強くて、遮ってやろうとした口を思わず噤む。
「…単刀直入に言うと、こちらの…鮫島社長の顧問弁護士を引き受けられる人間はもうどこにもいないみたいです。
協会の顧客ブラックリストに名前が挙がってますから」
「…な、何だって?」
…ブラックリストだと!?
「どっ、どういう意味だそれは!」
「さぁ…詳しくは聞いてないですけど。
ただ、僕が最後の砦だと上司に言われましたんで。
よく分かりませんけど」
首を軽く捻りながらも、薄く笑ってそう言うソイツ。
おい…なにがそんなにおかしい?
「そういうわけなんで、僕をクビにはできないみたいです」
「っ、何言ってんだ!お前なんかク、」
「よろしくお願い…島耕作!」
いきなりのその声量と意味不明な言葉に、隣でプッと吹き出す村沖。
そしてなぜかワクワクしたような目で俺を見るコイツとの狭間で、俺は開いた口が塞がらなかった。
いやマジで…
なんっなんだコイツっ…!