例えばこんな日常
第7章 99.9%難しい恋/MO
《0.1%に望みをかけて》
月曜日。
朝からソワソワして落ち着かない。
三浦から受けた秘策とやらを入念にチェックしつつ、腕時計に目をやると約束の時間の10分前を示していた。
あの日、ヤツの家(店)に行って決死の覚悟で告白(未遂)をした俺は、それと同時に失恋した。
だが、三浦に言わせれば『まだ何も始まってない』んだそうだ。
俺の気持ちも届いてないし、本当にあの女が彼女なのか本人からは聞いてない。
そもそもこの恋が成就する確率なんて、0.1%にも満たないんだ。
…だったら、その0.1%に僅かな望みをかけてみたっていいじゃないか。
あんなチャラ男からアドバイスをもらったのは癪にさわるが…
俺はここから…
今から、変わりたいんだ。
ふと表に足音が聞こえ、静かにドアがノックされる。
村沖の声のあとに、ガチャリと扉が開いた。
「どうも、」
初めてここに来た時と全く同じ格好でヤツが中に入ってきた。
その顔を見た途端、急に心臓がドクドクと早まり出す。
…お、落ち着け、冷静に。
まずは…
「…あ、この間は、すまなかったな!
せっかく、手料理を作ってくれたのに…」
メダカの水槽を指でツンツンしてるヤツに向かって、視線とともに投げかける。
「あぁ…具合大丈夫でした?
かなり顔色悪かったみたいだし」
振り返って珍しく心配そうな顔をするから、思わずたじろいでしまう。
「あぁ、いや、大丈夫だ…。
それより…あの日は、彼女との約束が…
あったんじゃなかったのか?
邪魔して…悪かったな、」
途切れながらも絞り出した言葉。
この真相を、確かめなければ…
「はい?」
聞こえないと言うように耳に手を当ててヤツがこちらを見た。
「…え?」
「彼女って…僕の?」
「そ、そうだ。あの女性は、」
「僕、彼女いませんよ」
「えっ?いや…あの女性が言ってたぞ」
「あぁ、また言ってたんだ…」
めんどくさそうに耳を掻いて、はぁとため息を吐いた。
「…ま、いいや。
で、今後のことなんですけど、」
「っ、待てっ!話はまだ終わってないぞ!」
そのまま流そうとするヤツを遮ると、手帳から目を上げたその視線とぶつかった。