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にじいろ。

第21章 君に届け。

蓋を開けたギターのハードケースの内側には
手書きで
『STORM かず&とーま』
と書いた紙が貼ってあって
ケースの中にはギャラリーからの募金なのか
小銭が少し入っていた。


スタジオでのライブとは違うから
観客に向けてMCをすることもなく
淡々と歌い上げる。



かずの歌声が
一人でも多くの人の心に響いてくれたら嬉しいな。
かずの歌声で
誰かの冷えた心が温まったらいいな。

そんなことを思いながら
見守るようにかずのことを見ていた。



♪〜 ♪〜



前奏が始まった。

あれ?これって。



♪何気なく笑い合えてる いつもと変わらない
 夕暮れも
 二度とはない名場面だ 今は心から思うよ

 肩を並べて 揺られてた
 逆さまみたいなモノレールで
 目を閉じたら あの日に帰れないかなぁ…

 夜空見上げて 瞬(またた)き探した
 また逢う日まで見上げているよ
 さよならは一度も 言わなかったんだ

 共に過ごした あの日々が 不器用な あの優し
 さが
 今日と 今日の この僕をつくっている
 何万光年離れたって この声が聞こえるよう
 に
 放つんだ もっと 光輝いてみせるよ
 多くは語らない やわらかな
 あの眼差し 忘れない…♪



出ていった親父の代わりに
ずっと俺に良くしてくれてたじーちゃんの歌だ

俺が中学の時に亡くなった
千葉のじーちゃんの歌だ。

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