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にじいろ。

第26章 輝かしい未来へ。

雨はとうに上がっていた。


心はこんなにも暗く沈んでいるのに
それとはそぐわない、煌びやかな街並み。

たった一年、ここに来なかっただけだ

あの頃俺は
毎日、毎日、ここに来ていた。

ここに来て
声をかけてきたオッサンと
毎日、毎日…



ピチャッ



うっかり水溜まりに足を落として
『あっ』
と思った時には既に遅かった

スニーカーもジーンズの裾も
見事に濡れて


はぁ…もう… どーだっていいや。


俺はまた歩き出す。





男「和也? 和也じゃないのか?」

えっ…?


振り返るとそこには
見覚えのある顔があった。



男「やっぱり。和也じゃないか!」


和也「あ…」



相変わらず左薬指に光る指輪に


和也「…久しぶり、ですね。
まだこんなとこ彷徨いてたんだ」

男「たまたまだよ。」


嘘ばっかり。
たまたまこんなとこ歩かないよ。


男「お前こそ。
まだやってるんだな、ウリ。」

和也「やってないよ…」



金払いのいい客だった。
酷いこともされなかった。




男「幾らだ?」



和也「…ゴマン。」

男「随分値上げしたな」


その人は笑いながら財布を取り出し
万札を五枚抜き取ると
俺のジーンズのポケットに捩じ込んだ。

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