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にじいろ。

第27章 背徳の瞳。

〜 和也Side 〜



退学届を出した。

一日も早く家を出る為に
職に有り付かなきゃならなかった。

もうあの家には居られない…
居ちゃいけないんだ。


『昔の客と
新宿のホテルに居た』


そこで何があったかじゃない
ゴマンで身体を売ろうとした
その為にホテルに付いていった

あの人を裏切るつもりだった
それは紛れもない事実だ。


『もう…終わりにしよう。』


不思議と涙は出なかった。
これで…あなたを解放してあげられる

あの瞬間、そう思ったんだ




帽子を目深に被り
俺は夜の街で歌を唄った

毎夜
毎夜

何かから逃れるように
声が枯れるまで
歌を唄った。

そんな時、俺を拾ってくれたのが
今のオーナーだった。




従業員「ナル。そろそろ出番だよ」

和也「はいよ」


俺は煙草を揉み消して
ステージへと向かう
此処はその昔
場末のストリップ劇場だった。
時代は流れて
今はミュージックバーになっている。


狭く薄暗いステージで
ピアノを弾きながら

ただ無心で歌を唄うんだ


あの人へ
届くようにと。

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