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にじいろ。

第27章 背徳の瞳。

ヒカルに肩を叩かれて振り返ると
スケッチブックを爪でコンコンと叩いた。

雅紀「もう描けたの?」

“うん”

雅紀「見てもいい?」

“うん”


スケッチブックをクルリとひっくり返すと
確かに絵は描かれていたけど…



雅紀「鍵…?」

“うん”


俺の絵を描いてくれていたはずなのに
何故、鍵の絵なのか。


雅紀「どうして、鍵なの?」


ヒカルは傍らに置いてあったホワイトボードを手に取って文字を書き始めた。


“ぼくは見えたものを描いただけ”


“四角の中に
カギをみつけたから”





…誰にも
誰にも、言ってないのに。




心の中の引き出しに
俺は鍵をかけた


君には
それが見えるの?

俺の気持ちが
わかるの…?



ヒカルが俺の頬に手を伸ばすと
唇の動きで伝えたんだ
声にはならなくても
はっきりとわかった




“ な か な い で ”




涙が
頬を伝っていることに気付いて驚いた。


もう、とうに枯れてしまったと思っていた涙は
まだ枯れてはいなかったんだ。

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