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にじいろ。

第27章 背徳の瞳。

トントン。

もう一度肩を叩かれる。


和也「だから、なんなんだよ!」

思わず声を張り上げた。



見ろ、ってことなのか
タブレットを目の前に持ってくる。

ホント、なんなんだよ…


雅紀「ヒカル、ほら、こっち来いって!」

あの人がソイツを後ろから抱きしめる。


…当て付けかよ
なんなんだよ
ふざけんなよ


ソイツは膨れたバッグの上に
タブレットを投げた。







…えっ……?








“まーくんを愛してる”

手書きの文字でそう書かれていた。


プチン、と
俺の中で何かが切れる音がした。




和也「…だってさ。
どうぞお幸せに。」


タブレットをあの人に押し付けて
バッグを持って俺は部屋を飛び出した。



雅紀「かず…!」




俺の名前を呼ぶな
もう二度と
呼ばないでくれ…。






追いかけてくる足音はしなかった。

玄関のドアを乱暴に閉めると
苦しくて
苦しくて
涙が溢れた。



― プルルルル プルルルル ―


和也「…もしもし」

Lily「カズ? 遅いからどうしたのかと思って。
帰って…来るよね…?」


和也「あぁ…帰るよ。」


俺の帰る場所は
お前んとこだけだよ、ケンジ。

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