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0時の鐘が鳴る前に

第1章 菜津子の部屋

お願い、彼氏のフリして…!

祈る気持ちで店員さんを見上げると、彼はため息をつきながらいつもの営業スマイルを浮かべた。

「…何、お前まだ紹介してくれてなかったの?俺は友達に、可愛い彼女の事自慢しまくってるけどね」

私の目を見ながら、美奈ちゃんにも聞こえるようにそう言うと

「初めまして、こいつの彼氏です。なんか誤解してるっぽいけど、安心して?こいつ、俺に夢中だから」

唖然とする高橋君と美奈ちゃんに向かって、スラスラと嘘を並べて微笑んだ。

か、完璧………ッ!!

こんな無茶振りなのに、対応が神すぎる…!!

「もうすぐ上がれるから待ってて。送ってく」

彼は最後にそう言いながら、感激する私の頭をくしゃっと撫でて去って行く。

…うわぁ。ノリよすぎ!演技なのに、ついにやけてしまう。

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