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0時の鐘が鳴る前に

第1章 菜津子の部屋

突然の出来事に驚く彼を指差して、私は嘘をつく。


「こ、この人!私の彼氏なの!」

「「は…?」」

店員の声と、美奈ちゃんの不審そうな声が重なって店内に響く。

…絶体絶命だ。店員さんがノッてくれなきゃ、更に事態が悪化するのが目に見える。


私は震える手でもっと強く彼の腕を掴むと、慌てて言葉を絞り出す。


「黙っててごめんね?だ、だってこんな格好いい彼氏の存在、秘密にしておきたくて……こ、このカフェで相談室してるのも、か、彼氏がいるからなの!」

彼が格好いいっていう事だけは嘘じゃない。毎回来るたびに、密かにそう思っていたのは事実だ。

だけど、こんなにスラスラと嘘が出てくる自分に自分で驚いてしまう。

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