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0時の鐘が鳴る前に

第2章 100日間の恋人ごっこ

* * *

夜、私は新しく連絡先に追加された広末さんのアドレスを見ながら、彼の言葉を思い出していた。

『…いいけど、条件がある。』

そう言って彼が提示したのは、二つの事だった。

“100日経ったら、全部忘れて関係を終わらせること”

“絶対に、俺を好きにならないこと”

「…全然、楽勝!」

私は部屋で独り言を言いながら、100日を数えてみる。

大体、人を好きになったことのない私がそう簡単に恋なんか出来るわけがない。

全部忘れてっていうのは、昨日までの店員と常連客に戻るっていうことだよね?

こんな無茶なお願いをしているんだから、彼の条件くらい喜んで引き受けちゃう。

「あ…」

スケジュール帳で100日数えたら、契約終了日は12月24日…クリスマスイブだった。

だからと言ってどうってことはないんだけど。

私は友達への後ろめたさが少し和らいで、幸せな気分で広末さんにメールを打った。

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