和服男子に恋されて
第2章 アプローチ
龍一の体と触れ合った途端、更に心臓の鼓動が速さを増す。
と同時に体温も一気にかあっと上がり、緊張のせいで体が固まった。
何とか喉の奥から声を振り絞って質問するも。
「せんせい……? どうされたんですか……?」
「弥子さんの髪と体、風呂上がりの良い香りがしますね。それに頬が薄桃色に火照って可愛らしい。つい誘われているのかと思いましたが、違うんですか?」
「そ、そんな! 誘ってなんか……!」
龍一の言葉に弥子は慌てて顔を上げ、返事をする。
そんな弥子をふふっと笑うと龍一は、
「冗談です。抱きしめたのは、私が我慢の限界だったからです」
「我慢の、限界……?」
「裁縫中、弥子さんを何度も取って食べてしまいそうになりました。弥子さんが……凄く可愛いので」
呆然とする弥子に対し、軽く首を傾げながら柔らかく微笑んだ。
「愛してますよ、弥子さん」
その言葉が弥子を困らせているなど、龍一は気付いていなかった。