和服男子に恋されて
第2章 アプローチ
「先生……!」
「もう先生は辞めだと言ったでしょう? 名前、で呼んで下さい」
相変わらずニコリと微笑み、真っ赤に顔を染めた弥子を見下ろしながら龍一は弥子が緊張した面持ちで、龍一から言われた通りに龍一の名前を呼ぶと。
「りゅ……龍一さん……」
「はい、何ですか? 弥子さん」
嬉しそうに右手を弥子の左頬に添えた。
そのせいで更に弥子が唇を震わせ、鼓動を速めようとは知る由もなく、見開かれた瞳を見つめてクスッと笑うと、視線を唇へと移し、続けて話し掛けた。
「どこから食べてしまいましょうか? 弥子さんの全てが愛おしくて、私が触れるのには勿体無いぐらいなんですが……まずはここを味見してみても良いですか?」
龍一の質問に、弥子はただ戸惑うしかなかった。