和服男子に恋されて
第2章 アプローチ
もう一度龍一から囁かれると、弥子は大人しく頷く。
「弥子さん、もう一度キスしますよ?」
そして言われた通りすぐに唇へ口付けられると、さっきのように唇が離れるのを静かに待った。
……しかし。
「ん……」
(えっ、何これ……何か口の中に……)
さっきとは違い、閉じていた口を何かにこじ開けられたかと思うと、生温い何かが口内へ侵入してくる。
ヌルついていて、弥子の舌や歯列の裏を這い回るそれが何なのか、弥子は苦しそうに眉根を寄せながら考える。
「ん、んう……」
(苦しい……キスする時、息ってどうしたら良いの……初めてで全然何もかも分からない……)
閉じた両目の端に涙を溜め、鼻孔から熱い息を漏らし、龍一の和服の胸元をきつく両手で握りしめたまま、弥子は暫くの間踊るようにスローに動くヌルついた何かに翻弄されていた。
「う、うぅん……んう……」
よくやくその正体に気づいたのは、唇を離し、愛おしそうに弥子を見下ろす龍一の言葉だった。
「弥子さんもその可愛い舌を動かしてください」