テキストサイズ

素晴らしき世界

第15章 それはやっぱりあなたでした

【二宮side】

目を覚ますといつも考える。


あの人は誰なんだろう……


俺は交通事故に合い、
怪我は大したことなかったのだか
意識が暫く戻らなかった。

その間、ずっと夢を見ていた。

でも、意識を取り戻し起きた時には
一部しか覚えていなかった。

俺が誰かを好きになる。

その好きな人は『男』だった。

不思議と嫌悪感は抱かなかった。

そして俺はその人の前から姿を消した。

夢の中でははっきりと見えていた顔が
目を覚ますと思い出せない。

でも、いつからか感覚が変わった。

俺が夢で好きだった人。


今までは『知らない人』だったはずなのに
『見たことがある人』に変化した。


一体、誰なんだろう……


記憶を辿っても、
思い出すことが出来ない。

松「どうした?ボーっとして」

心配そうに顔を覗き込んできた。

「……何でもないです」

退院後、リハビリに暫く通い
特に後遺症もなかったので
今は、以前バイトしていた
『松岡食堂』で働いている。

松「和が復帰してくれたお蔭で、
常連さんが戻って来たよ」

「違いますよ。
松岡さんの料理が美味しいんですよ」

松「嬉しい事、言ってくれるな!」

松岡さんは嬉しそうに笑って
俺の背中をバシッと叩いた。

「ゴホッ…」

松「あっ、スマン!」

力加減が出来ないのも
変わってないな……

片付けも一段落したころで、

松「あとはやっとくから帰っていいぞ!」

椅子をテーブルに上げながら
松岡さんが言ってくれた。

「じゃあ、お言葉に甘えて。
お疲れ様でした!」

松「おう!気を付けてな。
明日はゆっくり休めよ!」

「はい、ありがとうございます」

店を出て、駅に向かう。

事故前までは一人暮らしをしていたが、
長期入院かもしてないと医師に告げられ、
少しでも治療費を捻出する為に
親が解約した。

あのアパート、
もう誰か住んでるよな……

「あっ、ニノー」

後ろから聞き覚えのある声。

振り返ると雅紀と友達の潤がいた。

雅「仕事、終わったの?」

「うん。にしても凄い荷物だね」

両手にはスーパーの袋。

潤「今から兄貴ん家、行くの。
ニノもどう?」

「えっ?いいの?」

潤「人数が多い方が楽しいでしょ?」

雅「ねぇ、行こ?」


明日は休みだからいっか……


俺は誘いに乗ることにした。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ