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素晴らしき世界

第15章 それはやっぱりあなたでした

【大野side】

「はぁー、面倒くさい……」

ブツブツ独り言をいいながら
テーブルに散らばるビールの空き缶や
食べ終わったカップ麺を片付ける。

いきなり潤から電話がかかってきた。

『今から一緒に飲もう』って……

そして俺の返事も聞かず電話を切った。

まぁ、潤なりに俺を心配したんだろう。

『松岡食堂』には、あの日から行っていない。

二宮さんと再会した日から。


厳密に言えば初めて会った日か……


潤から何回か誘われたが、すべて断った。

あんなに二宮さんに
会いたいと願っていたのに、
会いたくなくなった。

俺が会いたかった二宮さんはもういない。

忘れようと必死になればなるほど
忘れることが出来ない。

俺は思い出に逃げるしかなかった。

二宮さんの手紙を見ては泣いて、
手でグチャグチャにして、
ゴミ箱に捨てようとした。

手紙を破ろうとした。


でも、出来なかった……


あの日、出会ったのも二宮さん。


わからない……


一体どれが本当の二宮さん?


俺の大好きな二宮さんはどこにいるの?


「もう、わからないや……」

俺は考えるのを止めて、
掃除機のスイッチを入れた。

部屋が一通り片付いたころ、
玄関のチャイムが鳴った。

モニターを覗くと相葉くんと潤の顔が
ドアップで写る。

思わず吹き出してしまった。

いつぶりだろう……笑ったの。

「開いてるから入って」

『はーい』

玄関から足音が近づいてくる。

相「お邪魔しまーす」

「相葉くんも来るなら言って……」

言葉に詰まってしまった。

振り返ると相葉君と潤の後ろに
二宮さんの姿が見えた。

戸惑いと嬉しさが混じり合う。

潤「あっ、ごめんごめん。
途中で二宮さんにも会って……
せっかくだし『一緒に飲もう』って
声かけたんだ。いいよね?」

「……うん」

何とか声を絞り出して答えた。

二「ありがとうございます」

ペコリと頭を下げた。

相葉くんと潤がスーパーの袋から
ビールやつまみを取り出して
テーブルに並べる。

それぞれ缶ビールを手に取り

潤「では、家飲みスタート!」

相「カンパーイ!」


心臓の鼓動がやけに煩い。


身体が温もりで包まれる。


お酒のせいじゃない。


身体が……
心が教えてくれた。


今隣にいる、二宮さんが好きなんだ……

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