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素晴らしき世界

第15章 それはやっぱりあなたでした

暫くするとお酒の力もあって、
少しずつ二宮さんとの距離が近くなる。

身体も心も近づいてはいるものの、
それは恋人としての距離じゃない。


友達としての距離……


好きだという気持ちは
近くにいればいるほど増していく。

でも、吐き出すことはできない。

想いを伝えれば、
友達としての距離もなくなってしまう。

想いを再認識した今、
俺の気持ちを伝えることは
二宮さんとの本当の別れを意味する。


男が男を好きになる。


それは常識では理解できない。


きっとあの時、
二宮さんと想いが通じ合ったのは奇跡で……

幽霊の二宮さんには記憶がなく
『俺』という存在しかいなかった。


でも、今は違う……


ようやく『俺』という存在を
二宮さんは認識し始めた。

俺は幽霊の二宮さんを知っていても、
今ここにいる二宮さんのことは何も知らない。


彼女がいるかもしれない……


好きな人がいるかもしれない……


どちらにしてもしなくても
『男』の俺は恋愛対象にはならない。


この恋に終わりはあるのだろうか……


スタートラインに立って走り出しても、
ゴールは永遠にない。


走り続けるしかないんだ……


二「体調でも、悪いんですか?」

「えっ?」

ソファーで一人座っていた俺に
二宮さんが声をかけてくれた。

二「辛そうな顔してたので……」

心配そうに俺の顔を見つめる。

「大丈夫だよ」

「よかった……」

安堵の表情が見えた。

その優しさが
俺を想いを走らせる原動力になる。


枯れそうな心を潤してくれる。


でも、その優しさは
きっと俺だけじゃない……


期待したらいけないんだ。


落ち込む心にブレーキをかける為、
テーブルにある缶ビールに手に伸ばす。

「空っぽか……」

二「よかったらどうぞ」

缶ビールを差し出した。

受け取とろうと手を伸ばした時、
二宮さんの指と俺の指が触れた。

一瞬で全神経が指に集中した。

二宮さんの顔に目をやると
頬が赤かった。

きっと、お酒のせい……

相「おーい、和」

ニ「はーい」

二宮さんは相葉くんと潤の元へ向かった。

触れた指を見ながら気づかされた。


偶然でしか
二宮さんに触れることが出来ない。


辛い……

悲しいよ……


俺は目を閉じた。

零れそうな涙を止めるため……

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