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素晴らしき世界

第15章 それはやっぱりあなたでした

うっ、寒い……

ゆっくりと目を開けると、
照明は消えて辺りは真っ暗だった。

身体にはブランケットが掛かっていた。

楽しかった家飲みの雰囲気は
まるでなかったかのように静かだ。


また、ひとりになった。


二宮さんが座っていた椅子を見つめる。

さっきまで二宮さんが
ここにいたんだよな……

「女々しいな俺……」

苦笑いしつつ台所に向かい、
冷蔵庫を開けて
ミネラルウオーターを取り出す。

そして飲みながら給湯スイッチを入れて
風呂の準備をする。

着替えを取りに、寝室に向かう。


ん?何か、違和感があるな……


ピピッ…

お湯が沸いた音が聞こえたので
慌てて浴室に向かった。

身体を洗い、浴槽に浸かる。

「二宮さんと連絡先、
交換したかったな……」

ポツリと漏れた本音。

相葉くんと潤とは仲良さげだったから
機会はあるかな……

もう、『松岡食堂』には
行けそうにない。

自分からきっかけを作れない分、
偶然に頼るしかない。


会いたいな……


さっき会ったばっかりなのに……

二宮さんのことになると
貪欲になってしまう。

人を好きになるって
こういう事なんだろうな……

「やめよう……」

考え始めると長湯になりそうだったので
急いで風呂から上がった。

そそくさと着替えて寝室に向かう。

ベッドに入った瞬間、
温かい塊に当たり、侵入を拒まれた。

「えっ?」

ベッドサイドチェストの上に置いてある
間接照明のスイッチを入れる。

「嘘だろ……」

そこには二宮さんがスヤスヤと
眠っていた。

帰ったんじゃないの?

俺はポケットにしまっておいた
スマホをタップする。

そこにはLineの通知があった。

【二宮さん酔っぱらって
起こしても起きなくて(笑)
実家暮らしは聞いてたけど、
家の場所、知らないから。
あと、よろしくねー】

笑い事じゃないし……

俺はベッドの端に座って、
寝顔を見つめる。

オレンジ色の照明に照らされた
二宮さんの寝顔はとても綺麗だった。

あの日と同じように指で頬を突いたら
『フフッ』って笑った。


ぷっくりとした唇


俺はあの日と同じように
二宮さんの唇に吸い寄せられた。


触れるだけのキス


これ以上いたら
止まりそうにない……

額にかかる前髪を指で払い、
瞼にキスをして寝室を後にした。

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