テキストサイズ

素晴らしき世界

第15章 それはやっぱりあなたでした

【大野side】

二 「智……」

俺を呼ぶ、愛しい人の声。

ゆっくりと目を開けると、 ベッドの端に座り
大好きな優しい顔で俺を見つめていた。


どこにも行かないで……


夢の中だけでも、そばにいて……


俺は二宮さんの顔に手を伸ばし、
頬を包み込んだ。

すると二宮さんも俺の顔に手を伸ばし、
頬を包み込んだ。

二「悲しい顔しないでください……」

頬を包み込んだ手の指が、俺の目尻を拭った。

二「泣かないでください……」

俺は起き上がり、
二宮さんをギュッと抱きしめた。

二宮さんも俺の背中に手を回し、
ギュッと抱きしめてくれた。


俺が二宮さんしたいこと……


二宮さんに俺がして欲しいこと……


夢の中なら叶えられる……


二「ふふっ……ずいぶん積極的ですね?」

俺の胸に顔を埋めている二宮さんが呟いた。

「二宮さんも同じでしょ?
現実はずっと我慢してるんだから……
夢の中くらいは、いいでしょ?」


ここなら素直になれる。


二「ひとつ、聞いてもいいですか?」

「なに?」

二「僕のこと……好きですか?」

「好きだよ、大好き」

ギュッと二宮さんに回した腕に力を入れた。

二「本当ですか?」

「本当だよ、今もこれからも大好き」

二「信じていいんですか?」

二宮さんの身体が震えている。

さっきよりも腕に力を込めた。

「もちろん。何度だって言うよ?
俺は二宮さんが大好き、愛してる……」


夢の中なら、想いを伝えられる。


二「大野さん、痛いよ……」

「ごめん、ごめん……えっ?痛い?」


今見てるのは、夢だよな?


だって二宮さんは、
俺の事を覚えてないんだから……


腕の力を緩めると、ゆっくりと
俺の身体から二宮さんが離れていく。

二「気がついてないみたいですね?」

ゆっくりと両手が顔に伸び、
その指が両頬をつねった。

二「痛いですか?」

「ひぃたぁいでしゅ……」


何で、夢の中なのに痛みを感じるんだ?


もしかして……


二宮さんの手が頬から離れていく。


ジンジンと痛みがまだ残る。


二「ただいま……大野さん」


潤んだ目で俺を見つめる。


これは、現実なんだ……


俺を愛してくれた人がここにいる。


「おかえりなさい……二宮さん」


俺の頬に温かいものが流れた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ