テキストサイズ

素晴らしき世界

第15章 それはやっぱりあなたでした

【智side】


「和也……」


あの日呼べなかった……愛しい人の名。


和「智……」


あの日と同じ、俺の名を呼ぶ愛しい人。


名前を呼び合うなんて
恋人同士なら当たり前のことだけど、
俺たちは出来なかった。

それが出来る幸せを噛み締めるように
何度も名前を呼び続けた。

その度に和也の目から流れる
綺麗な涙が勿体なくて
あの日と同じようにキスをした。


和也のモノならすべて欲しい……


俺は片肘を和也の顔の横につき、
さらに二人の距離を縮める。

見つめる先の和也の潤んだ瞳は、
次を望んでいた。


それは俺の望んだことと同じ……


和也の唇にキスを落とす。

唇を離すと、まるで磁石のように
和也の唇にまた吸い寄せられる。

触れる時間が段々と長くなる。

角度を変えながら、和也の唇に食らいつく。

食べても食べても、満たされない……。


もっと……

もっと和也が欲しい……


唇と唇の間に舌を滑らせると、
小さな空間ができた。

ゆっくりと舌を忍ばせると、
和也の舌が俺を迎える。

お互い逃がさまいと、舌が絡み合う。

口内は熱くて、蕩けそうになる。

和「……ぅん……っ、…んっ」


漏れる吐息……響く水音……


一つ一つ奏でる音が心地いいのに、
その場に留まることが出来ない。


だって俺は知っているから……


和也の甘い、感じる声


紅く染まる頬


俺を求める潤んだ瞳


そして、
その先にある二人だけの快楽を……


唇を離すと、少し苦しかったのか
肩で息をする和也。

「ごめん……辛かった?」

和也は首を横に何回か振った。

そして、俺は最終確認をする。

聞いたって止めることは出来ないけど……


和也も同じだよね?


「いい?」

和也は嬉しそうに微笑むと、
ゆっくりと頷いた。

少しだけ体をずらして
和也の服のボタンに手をかける。

震えて上手く外せない。


ここまであの日と
同じじゃなくていいのに……


すると、和也が起き上がった。

「どうしたの?」

俺も体制を変えて和也を見つめた。

一旦ボタンから離した手に
和也の手が伸びてきた。

俺の手の甲に重なった手は、震えていた。

和「大丈夫、一緒ですから」

「うん、一緒だね」

微笑み合うと、互いの服に手を伸ばした。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ