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素晴らしき世界

第18章 What is the most stupid thing?

「失礼します」

ドアを開けると担任の先生を探す。

「二宮、こっちや!」

手招きする方へと俺は向かった。

「今日までお世話になりました」

頭を下げてお礼を言った。

「本当にみんなに言わなくていいのか?」

「はい、そういうの苦手なんで……」

「そうか……新たな場所でも頑張れよ」

「はい」


今日は2学期の終業式。


体育館に並び、ダラダラと校長先生が
冬休みの過ごし方について話す。

俺はそんな事には目もくれず、
少し離れた場所の先頭に立つ
相葉くんの背中を見つめる。


だって、この姿も今日が最後だから……


通知表を貰って早めの帰宅のつもりだったが
ある場所へと足が自然と向かった。


そこは体育館。


開いていたドアから中を覗くと、
冬なのに汗だくになりながら
練習する相葉くんの姿が見えた。


真剣に練習したり、
指示を出しているから
俺の存在に気づく気配はない。

だから目に焼き付ける様に
ジッとその姿を見つめた。


これでもう、思い残すことは何もない。



「ほら、もう行くわよ?」

「わかった」

母さんに促されて
少し大きめの鞄を持って車に乗り込む。

「忘れ物はない?」

「……ない」

「じゃあ、出発するわよ」

サイドブレーキを解除して、
アクセルを踏んだ。

俺たちの車の後をトラックが続く。

信号待ちをしていたら、反対方向から
相葉くんが歩いてくるのが見えた。

ここの道を歩いているってことは、
俺の家に向かってる?


まさか……

全然、俺に会いに来なかったじゃん。

何で今日なの?


前を歩く相葉くんは、
俺の車に気づいてこっちに走ってくる。

それと同時に信号は青に変わり、
相葉くんと助手席に座る俺は
目を会わせることなくスレ違った。

サイドミラーに写る呆然と立ち尽くす
相葉くんの姿がどんどん小さくなっていく。

きっと、俺の後ろにつく
トラックを見て気づいたんだ。


俺が引っ越すことを……


ポケットの中で震えるスマホ。


さようなら、相葉くん。


俺はあなたの元から消えます。


素敵なプレゼントでしょ?


だから、幸せになってね?



お誕生日、おめでとう……まーくん

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