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素晴らしき世界

第18章 What is the most stupid thing?

再会当日、家の中は服が散乱していた。

どれも外に着て行ける代物ではなかった。


これ、何年戦士だよ……


首元がデロンデロンになった服を見つめ、
自分の事ながら情けなくなった。


『ダサい』なんて
去っていった彼女に言われたっけ……


【動きやすければいい】

これが服選びのモットー。


だから長く着ている服ほど
俺の身体にフィットしていた。

でも、今日はそういう訳にもいかない。


一応、自分の中で見繕った
外に出ても大丈夫な一軍の服を着て
買い物に出かけた。


緊張しながらも、
お洒落な服が並ぶお店に足を踏み入れた。

しかし、ハイレベルな服を前に
どれを選んだらいいか皆目見当がつかない。

「何かお探しですか?」


神様、降臨……


お客さんでごった返している中、
店員さんが俺に声をかけてくれた。


このチャンスを逃すまいと店員さんを独占。


試着室であれやこれやと着替えさせられる。


店員さんの着せ替え人形状態。


でもそのお陰で
自分では決してできない、
お洒落なコーディネートが完成。

感謝の気持ちでレジへと向かうと、
嬉しそうに店員さんが合計金額を伝えた。


俺、いいカモだったのかな……


初めてクレジットカードを使った。


帰り道、
これまたお洒落な美容室が目に入る。

店のガラスに映る自分の髪は
長くはないが、無造作に伸びていた。


髪切ったのいつだっけ?


せっかくお洒落な服を買っても、
この髪じゃ台無しだよな……


こうなりゃ、とことんやってやる。


ここまでお金使ったんだから、
あといくら使ったって一緒。


半ばやけくそ状態で、美容室に入店。


するとちょうどキャンセルが入ったらしく、
すぐにカットすることが出来た。


家に戻ると買った服に着替え、
スタンドミラーの前に立ち
自分の姿をマジマジと見つめる。


って、何で俺こんなに張り切ってるんだ!


「ああぁぁぁ!」

思わず髪を掻きむしると、セットが崩れた。


もう、何やってるんだろ……


大きな溜め息をつきながら
洗面所へ向かいセットし直した。

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