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素晴らしき世界

第18章 What is the most stupid thing?

そろそろ出るか……


待ち合わせ時間の30分前。

もう一度身なりを確認し、家を出た。

駅に向かい、電車を待つ。

その間も辺りをキョロキョロしてしまう。


誰かいないかな?


就職と同時に地元に戻ってきた。

……と言うより戻りたかったから、
必死に就職活動をした。

こんなに頑張ったことはない。

地元に戻るためだけに
適当に就職先を決めたくなかった。

ちゃんとその中で、
自分がやりたい仕事を見つけたかった。


いつか……もし、
相葉くんと再会した時に胸張って、
今の自分を見せられるように……


電車に揺られ目的の駅に到着。

確か駅から近いって言ってたよな……

スマホに表示される地図を見ながら、
店を探していたら、


「にの?」


懐かしい……
けど、聞き慣れた声が後ろから俺を呼ぶ。

すると俺の目に飛び込んできたのは、
ファッショナブル?な服を身に纏い、
グラサンをかけた人物。


パンチがあり過ぎて怖い。

でも、立ち止まって俺を見ているのは
この人だけだし……


「じゅっ……潤?」

恐る恐る名前を呼ぶと、
かけていたグラサンを少しズラし
ニヤリと笑いながら俺を見た。

「よっ、にの。久しぶり」

グラサンを外し、
襟元にかけながら近づいてくる。

あの頃はまだ幼いと言うか、
丸い感じが残っていた潤も
シャープになって大人の色気を感じた。


でも、優しい瞳はそのまま……


「久しぶり。元気にしてた?」

「おう、そっちは?」

「俺も。で、今は……」

「焦んなって。時間はあるんだから。
近況報告はみんなが集まってからだ」


完全に俺、舞い上がってる……


「なにボーッとしてんだよ。
店ここだから、早く入ろうぜ?」

潤が手招きしながら俺を呼ぶ。

その顔は完全に嬉しさで頬が緩んでいた。


なんだ……潤も同じじゃん。


「うん」

俺は潤に駆け寄り、店に入った。


『こちらでございます』

店員が案内してくれた
個室の引き戸をノックした。

「はい、どうぞ」

少しぐぐもった声が中から聞こえた。


もちろん、その声も懐かしくて……


潤がゆっくりと引き戸を開けると、
声の主がこっちを覗き込んでいた。

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