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素晴らしき世界

第18章 What is the most stupid thing?

潤が注文した料理がどんどん運ばれてくる。

「智、刺身ばっかり食うなよ」

櫻井先輩がマグロに箸を伸ばすと、

「これは俺のだから」

取られる前にパクッと食べてしまった。

「貝だけは譲れないからなっ!」

「ちょっと、俺の分も残しててよ!」

相葉くんは大好物のから揚げに
レモンを絞りながら懇願する。


潤は手際よく届いたサラダなどを、
小皿に分けて並べていく。

「ほら、にのも見てないで食べなよ?」

潤が取り分けてくれたサラダを
俺に差し出した。

他に比べて俺の分は少ない。


俺が少食だって事を、
潤は覚えてくれてたんだ……


「ありがとう」


この雰囲気は高校時代と同じ。


上の3人がわちゃわちゃ騒いでて、
俺と潤が眺めてる。


「ほんと、
どっちが年上かわからないよね?」

潤も同じことを思っていたのか、
刺身ひとつで盛り上がる3人を見ていた。


「もう、食べ過ぎっ!」

相葉くんが刺身の盛り合わせを取り上げた。

「ほら、潤も食べな?
にのもこのタコだったら食べれるよね?」

俺と潤の間に置いてくれた。


相葉くんも俺が生ものが食べれないの、
覚えてくれてたんだ……


誰も手をつけなかったタコ。


もしかして、大野先輩も櫻井先輩も
わかっていて残してくれてたのかな?


そんな事を思いながら、
タコに箸を伸ばして口に運んだ。


それからはみんなの近況報告。


大野先輩は文具会社に就職。

好きだった絵も
会社の援助を受けて続けている。


櫻井先輩は誰もが知っている一流証券会社。

食事の合間に、
タブレットをビックリするくらい
早い指の動きで操作してた。


潤はアパレルメーカーに就職して、
服やアクセサリーなどの
デザインを手掛けている。

今のパンチある服装にもみんな納得した。


相葉くんは、スポーツ用品店に就職。

『運動が出来ないだよね……』って
嘆いたら『当たり前だ』って
総ツッコミを食らってた。


俺はゲーム会社に就職。

みんな『にのらしいな』って言ってくれた。


良かった……

ちゃんと自分がやりたい仕事に就いて。


でも俺が聞きたかった近況……

相葉くんの薬指に光る
指輪の事は語られなかった。

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