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素晴らしき世界

第18章 What is the most stupid thing?

「何してんの?」

後ろから聞こえた声にびっくりして、
慌てて伸ばしていた手を引っ込めた。

「まっ、漫画読もうと思って。
お風呂、早かったね?」

適当に漫画を取ると、
近くにあるソファーに座った。

「シャワーだけだからね。
あれっ、これ……倒れてたんだ」

俺がさっきまで見つめていた
写真立てを手に取った。

ここからは写真は見えない。


けど、相葉くんの表情はよく見える。


写真を見つめる目は
とても優しく、愛おしそうだった。


「その写真……」

聞かずにはいられなかった。


でも、聞きたくない。


ずっと避けてきた現実に
強制的に向き合う事になる。

でも、向き合わないと
俺の時間は進まない。



相葉くんへの恋とお別れしなきゃ……


「本当にいい人なんだ」

その子を思い浮かべるように
優しい口調で話をする相葉くん。

「そうなんだ……」

顔を上げることができない。

俺、ちゃんと相槌できてる?

相葉くんは気にならないのか
気づいてないのか、言葉を続ける。

きっと、気づいてない。


彼女のことで頭がいっぱいだから……


「自分のことより俺のことを考えてくれる。
それで自分が傷ついたって止めないんだ。
ホント、頑固で笑っちゃう……」


最高の彼女じゃん……

相葉くん、幸せ者だね?


「でも、離れ離れになっちゃって……」

急にトーンが低くなるから
思わず相葉くんの顔を見たら、
悲しそうな顔をしてた。

「転勤?」

「まぁ、似たようなことかな?」

曖昧な答えに戸惑い、言葉が出なかった。

「でもね、久しぶりに再会できたの。
本当に嬉しかった。けどね……」

次の言葉が出てこない相葉くん。


表情は苦しそうで……


「相葉くん?」

「その子の気持ちがわからないんだ。
久しぶりの再会も、今までの出来事が
無かったかのように普通なんだ。
どうしたらいいか、わからなくって……」


今まで見た事のない弱気な相葉くん。


「……聞いてみたら?」

「えっ?」

「その子に……」


解決するには彼女に向き合うしかない。


じゃなきゃ、俺みたいになっちゃうよ?


「そう……だよな」

そう言うと、俺の顔の前に
写真立てを突き出した。

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