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素晴らしき世界

第18章 What is the most stupid thing?

容赦なく写真が目に飛び込んできた。

隣に写るヤツの肩に手を回し、
密着して嬉しそうに笑う相葉くん。


俺の大好きな笑顔……


隣のヤツも髪を密着させ、
嬉しそうに笑ってる。


「ねぇ、答えて」

解決する方法を助言した俺に、
相葉くんは答えを求めた。


答えなんて言える訳ない……


黙っている俺に相葉くんは
自分の想いをぶつけてきた。

「あの日、ずっと秘めてた想いを
吐き出して……ひとつになれた。
やっと、友達から卒業できるって思った」

ずっと聞かずに逃げてきた
相葉くんの言葉が俺の心を抉る。

「でも、恋人になれなかった。
そして友達にも戻れなかった。
最後には俺の前からいなくなった」

その時の事を思い出したのか、
寂しい表情になった。


俺はその表情を知ってる。

だって俺は何度も遭遇していたから……


「でも友達に言われた。
『それもひとつの愛の形じゃない?』って」

一昔前に聞いてたらサブい台詞も
今は全く笑えない。

「俺、バカだからわからない。
同じ想いなのに何で恋人になれないの?
好きな人がそばにいないのに、
何が愛の形だよ……ふざけるなっ!」

「ふざけてなんかっ……
俺だって生半可な気持ちで、
想いを断ち切ろうとした訳じゃない!」

相葉くんの感情に流されて、
俺も声を荒らげてしまった。

気がついて手で口を押さえたときには
もうすべて吐き出してしまっていた。

「じゃあ、この時……
何を思って俺を避けたんだよ」

再び写真立てを俺の顔の前に差し出す。





そこに写るのは……
高校時代の俺と相葉くん。





もう一度、あの日に向き合った。


「堂々と手を繋いでデートも出来ない。
誰にも恋人を紹介することも出来ない。
結婚も、子どもを産むことも出来ない」


『出来ない』ばかりが口を衝いて出る。

出来ることなんて何一つない。

わかっているのに悲しくなる。

わかっているのに胸が苦しい。


涙が溢れ落ちそうになるのを、
必死に膝に置いた手を握りしめて耐えた。


そして、最後に言わなきゃいけない事……


「俺たちに未来は……未来は……」

ポツリと握りしめた拳に涙が落ちた瞬間、
その手をグッと引っ張られた。

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