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素晴らしき世界

第18章 What is the most stupid thing?

一瞬のうちに俺の身体は
相葉くんの腕の中に包まれていた。

「離してっ、相葉くん!」


本当は離してほしくなんかない。

相葉さんの背中に手を回せたら、
どんなに幸せか……


でも、身体と頭は冷静で
道を外そうとする相葉くんを
必死に引き剥がそうとする。


「嫌だ、絶対に離さない」

言葉と共に、相葉くんの腕が
痛いほど俺の身体を締めつける。

「何で……
どうして、わかってくれないの!」

部屋に響く、悲痛な叫び。

「わかってないのはお前だ!」

優しさの無い相葉くんの言葉に
身体がビクッと震えた。

「ごめん……」

相葉くんからポツリと聞こえた謝罪の声。

とても悲しい声だった。


そんな声を出させてるのも俺なんだ……

やっぱり俺は近くにいちゃダメなんだ……


「本当はわかってるんだ……
俺のことを想って行動してたこと」

わかってるんだったら、
どうして俺のことを離してくれないの?

「俺も必死に忘れようとした。
彼女もいた時期もあった。
けど、ダメだった……」

俺を包んでいた手を離すと、
相葉くんは写真立てを差し出した。

写真を2人で見つめる。

「彼女と撮った写真を見て気がついた。
俺、笑えてなかった……心から」

そして目線を写真から俺へと移した。

「この写真みたいに俺が心から笑えるのは
にのの……かずの前だけなんだ」

大きい澄んだ瞳が俺を捉える。


俺だってわかってる……


この写真みたいに笑うのは
相葉くんの前だけなんだよ?


けど、そんなちっぽけな理由で
道を踏み外してはダメなんだよ……


「俺の将来……未来を考えて、
俺から離れたんだろ?」

ここまできたら
自分の気持ちを隠す理由はない。

わかって欲しくて、素直に頷いた。

「だったら俺に未来を返して?」


返すって……


俺は相葉さんから離れた。

未来は相葉くんの手に戻ったはず……


「俺の未来……
明日には、かずが必要だから」


俺を必要としちゃダメだ。

俺なんかいたら、未来なんてない。

しないでいい苦労をするのは、
相葉くんなんだよ?


もう、突き放すしかない……


ごめん、相葉くん。


下を向き、唇を噛み締めた。


「俺には相葉くんはひつ……」


嘘をつこうとした瞬間、
相葉くんの長い指が俺の顎を掴んだ。

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