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素晴らしき世界

第18章 What is the most stupid thing?

「かず、俺の目を見ろ」

顔を上げられ無理やり合わされた視線。

瞳と表情から醸し出された強い意志を前に、
嘘をつくことが出来ず目を逸らした。

「変わらないな……
嘘つく時は目、合わせないもんな」

表情がフッと緩んで、優しく笑った。


いつもそう……すぐに嘘はバレる。


嘘ついたって責めることなく
さっきみたいに笑って許してくれる。


だって俺が嘘つく時は


相葉くんを傷つけない為……

相葉くんを悲しませない為……

相葉くんを巻き込まない為……


全部、相葉くんの為


きっと相葉くんもわかってる。


どんな時だって俺の気持ちに気づいてる。


だから、ずっと逃げたんだ……


「嘘はいらない。
かず、素直になれよ……」

相葉くんの手が顎から頬へと移動し
優しく包み込んだ。


相葉さんの仕草が……

相葉さんの言葉が……

相葉さんの表情が……


頑なに閉ざしていた心の扉を開いていく。


「俺には相葉くんは……相葉くんは……」

でも、また閉じようとする。

次の言葉が出ない。

俺の頭の中で2つの言葉がグルグル回る。


無意識に下を向いていた俺の顔を
相葉くんの手が再び顎を掴み上を向かせる。


「何があったって俺が選んだ道。
後悔しない。もし、後悔するとしたら……」


瞬きもしないでジッと俺の瞳を見つめる。


「かずと別れた事を後悔する。
かずを手放した事を後悔する。
俺の後悔は、かずがいなくなった時に
起こる事しかないから……」

俺といることより、
俺といないことを後悔してくるの?

俺の存在は相葉くんに光を灯せるの?

「かずがそばにいる限り、
絶対に俺は後悔しないんだ」


『絶対』なんてこの世にはないのに、
相葉くんが言うと信じたくなる。


相葉くんの明日に俺がいていいの?

相葉くんの未来に俺がいていいの?

ずっと……ずーっと、いていいの?


「かず……俺を選べ」


有無を言わせない、力強い言葉が放たれる。


勝手に目から涙が溢れてきた。


「返事は?」

頬を伝う涙を指で拭いながら、
優しく俺に問いかけた。

俺はゆっくりと頷いた。

「やっと……俺のモノになった」

そう言って俺をギュッと優しく抱きしめた。

俺もやっと素直に
相葉くんの背中に手を回すことができた。

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