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素晴らしき世界

第21章 嫌いの向こう側

テーブルの前に並んだ生肉。

「頼み過ぎじゃね?」

翔さんが苦笑いを浮かべる。

「頼んだの翔くんでしょ?」

「いや、相葉くんだから……」

「あっ、俺のせいにした!」

「はいはい、煩い。
責任もってみんなで食べること」

網にタン塩を並べていく。

「えっ?俺、関係ないでしょ?」

眠い目を擦りながら智が
いけしゃあしゃあと言うので

「止めなかったリーダーも同罪」

「マジか……」

ガックリ項垂れるリーダーを横目に
みんなのお皿に焼けたタン塩を置く。

「ほら、食べた食べた。
俺が焼いた肉、残すと怒るからね?」

ニヤリと笑って見せた。

「ほら、S潤が発動したよ。
早く食べなきゃ、ヤバいよ?」

珍しくニノが一番に
お肉に箸を伸ばして口に含む。

「じゃあ、気合入れますか?」

翔くんの言葉に相葉さんが腕まくりして、

「食い付くしてやる!」

パクッとお肉を口に放り込んだ。

「食えるかな……」

恐る恐る口に運んでいく。


さすが若者が5人も集まれば、
多いと思ったお肉も綺麗に無くなった。


「もう、お腹いっぱい」

脱力しつつ、腹を擦っている相葉くん。

「もう、限界……」

今にも寝そうなリーダー。

伝票を見て、計算する翔くん。

俺はズズッと温かいお茶を飲む。


「あの……ちょっといい?」

目線だけニノにやると、
いつもと違う神妙な顔つきをしていた。

みんなもそれを察したらしく、
話を聞く態勢になった。

「俺の仕事で、みんなに迷惑かけてごめん。
でもその分あっちで俺、頑張るから。
『嵐』の名に恥じないように……」

茶色みがかった瞳は揺れることなく、
俺たちを見つめる。

「だから…
帰ってくるまで待っててください」

また、深々と頭を下げた。

「もう……大袈裟だよ、ニノ」

クスッと笑いながら翔くんが呟く。

リーダーと相葉くんは、
感動してウルウルしてるし。


変なこと言うなよ……

調子が狂うじゃん。


「待ってるから、頑張れよ」


俺らしくもない。

敵に塩送ってんじゃねーよ。


「ありがとう」

俺を見つめる目には薄っすらと
涙が溜まっているように見えた。

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