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素晴らしき世界

第21章 嫌いの向こう側

言葉を発した瞬間、
ニノの口に指を突っ込んだ。

目に涙が浮かんでは、頬を伝っていく。

でも、顔色はよくなった気がした。

「大丈夫だから……」

俺はニノが落ち着くまでずっと背中を擦った。

「ありがとう……もう大丈夫」

さっきとは違い、自然な笑顔だった。

そしてトイレを出る瞬間、
ニノの手をギュッと握った。

「じゅ、潤君?」

「また無理するから、俺から離れるな」


勢いに感けて何してるんだ……

いつもの様にツッコんでくれよ……


じゃないと俺……勘違いしちゃうよ?


反応がないのでそのまま部屋へと向かう。

『お前ら、やっぱり仲いいな』って
総ツッコミを食らった。

でも、いつものニノのツッコミは
鳴りを潜めていた。


それから暫くしたら宴会はお開きになった。

「ニノと松潤は家、近いよな?
これでタクシーで帰りな?」

スッと先輩が1万円を差し出した。

「ありがとうございます」

俺たちは頭を下げて、
止まっていたタクシーに乗り込み
目的地へと向かった。

着いたのは俺のマンション。

お金を払い、
ニノの手を取ってタクシーを降りた。

「えっ?俺……」

「ニノ、明日休みだよね?」

早口で捲し立てて、すけ入る隙を与えない。

「う、うん、そうだけど……」

「じゃあ……」

「えっ?なっ、ちょっと」

ニノの言葉は無視して、再び歩き始めた。

加速し出した俺の想いとは反比例するように
玄関で足を止めたニノ。

手を引っ張っても入ろうとしない。

「……優しくしないでよ」

下を向いたまま、ニノが呟いた。

「ずっと俺のこと嫌いだったでしょ?
でも急に、態度が変わって……
俺、どうしたらいいかわからない」

手で顔を覆ってしまった。

俺は手を伸ばし、
震えるニノを身体を抱きしめた。

「止めてよっ!」

必死にもがくニノをさらに強く抱きしめる。

「ゴメン」

「許さない…っ」

「どうしたら、許してくれる?」

「そんなの自分で考えろっ」

「じゃあ、許してもらえるまで
ずっと傍にいてもいい?」

「かっ、勝手にしろ!」

言葉とは裏腹に、
ニノはそっと俺の背中に腕を回した。

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