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素晴らしき世界

第22章 好きの向こう側

でも潤の態度が、
ある日を境に変わった。


ハリウッドの映画から戻ってきてから、
潤は俺に少しずつ優しくなった。

それは見せかけの優しさじゃなくて、
他の人と同じ優しさ。


ハリウッドに旅立つ前、
いつもの俺らしからぬ態度だったから
潤の気持ちに何かしらの
変化が起こってしまったんだろう。


嫌われなくなって、傷つく事がなくなった。


それがすごく寂しかった。


だって、俺を傷つけていたのは
潤だけだったから……



俺と潤だけを繋ぐものが消えた。



優しくったって、
みんなと同じならいらない。


でもあの日……
先輩後輩が集まっての飲み会。

酔っぱらって体調が悪くなった俺を、
口に手を突っ込んでまで介抱してくれた。



俺にだけに見せた……俺だけの為の優しさ。



戸惑いを隠せなかった。



何で?どうして?

俺の事……嫌いだったよね?



潤の優しさに免疫のない俺。


勘違いしちゃうよ?


そして何もわからないまま
連れてこられた潤の家。


俺はとうとう想いをぶつけた。


「……優しくしないでよ」

潤の顔を見ることが出来ず、
下を向いたまま言葉を続ける。

「ずっと俺のこと嫌いだったでしょ?
でも急に、態度が変わって……
俺、どうしたらいいかわからない」

勝手に涙が想いと共に零れる。

すると俺の身体は温かいものに包まれる。

「止めてよっ!」

これ以上優しくされたら
必死に隠してきた気持ちを吐き出してしまう。

「ゴメン」


何に謝っているかわからないけど……


「許さない…っ」

「どうしたら、許してくれる?」


許すもなにも俺は怒っていないけど……


「そんなの自分で考えろっ」

「じゃあ、許してもらえるまで
ずっと傍にいてもいい?」


……ホントに?

ずっと俺の傍にいてくるの?

めちゃくちゃ嬉しいけど……


「かっ、勝手にしろ!」

言葉とは反対の態度だけど、
潤の背中に手を回した。


絶対に離さない……


ずっと、嘘をつき続けてやるんだ。

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