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素晴らしき世界

第26章 勝手に挑戦、受けて立つ【交流戦第一試合(延長戦)】

「せっかくだから出かけない?」

「えっ?」

まさかの言葉に俺は固まった。


この状況で出かけるの?


「今を楽しまなくっちゃ……でしょ?」

まさか自分が言っている言葉が
自身に投げかけられるとは思わなかった。


そっか……


ごちゃごちゃ考えても何も変わらない。


それなら今しか
体験できない事をしなきゃだな。


「じゃあ、早速準備……あっ!」


俺……真っ裸じゃん。


「どうしたの?」

「ふくが……ない」

「なぁぁぁぁぁぁ!あっ?」

これじゃ外にも行けない……

そう思って何もないだろうけど、
辺りを見回してみた。

「あれ……」

窓際に小さく畳まれている服。

なぜそこにあるかは分からないけど、
問題は解決された。

「よし、着替えよう!」

「えっ?」

なぜか張り切っていると言うか……

ノリノリのカズ。


楽しいのは俺だけじゃないんだな。


服を広げると俺の頭に被せた。

「じっ、じぶんでやるよ」

「遠慮しないの。
あっ、見て見て!小さなブリーフ」

チラチラと笑いながら見せつける。

「まじか……おいっ、やめろ!」


恥ずかしいけど……

じゃれ合うのも楽しかったし、
お世話されるのも悪くないって思った。


それから2人で手を繋いで出かけた。

いつも俺がカズの小さな手を握っていたのに、
今はカズが俺の手を握りしめている。

ご飯はいつも行くような
お洒落な店じゃなくてファミレス。

周りを気にしないで過ごせるって
こんなに楽しいんだって思った。

まさかのお子様ランチを頼まれるとは
思ってもみなかったけど。

美味しくてモリモリ食べてたら、
『ついてるよ』って指で
汚れた部分を拭いてくれた。


その姿をみて俺は嬉しかった。


世話を焼かせているんだって思ったから……


その後は夕飯の買い出し。

勝手知ったるスーパーだけど、
何せ身長が低いから物が取れない。

必死にジャンブしてたら、
フワッと身体が浮いた。

後ろを振り返るとカズが俺を抱っこしてた。


何か……頼るっていいな。


「ありがとう」

不意打ちで唇にキスをしたら
『どういたしまして』って言って
俺の唇にキスをした。


ヤバい、嬉しい!


そしていつも照れるはずの
カズが余裕な感じで……


また少しカッコよかった。

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