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素晴らしき世界

第27章  勝手に挑戦、受けて立つ【交流戦第二試合】

新人歓迎会はあっという間にお開き。


俺は松本を支えながら……

相葉ちゃんは二宮を支えながら店を出た。

「指導係は大変だな」

クスクス他人事のように笑っている翔ちゃん。


その指導係に任命したのは誰だよ……


「ホントだよ」

翔ちゃんの意見に同意してるけど、
相葉ちゃんは全然辛そうじゃない。


寧ろ頬、緩んでますけど?


「相葉ちゃんは楽じゃん。
二宮ちっちゃいんだから……
俺なんて松本の方がデカいんだよ?」

「「ご愁傷様」」


くそっ、自分の身長が腹立たしい……


「課長、二次会行きますよ~」

「わかった。じゃあ、またな。
今度は3人で飲みに行こうな」

嬉しい言葉を残して集団に合流していった。


「さて……コイツらを連れて帰りますか」

「そうだね」

松本を支え直して俺たちは駅へと向かう。

「ちゃんと歩けって!」

「はぁ~い」

返事はいいけど足元はフラフラで……

「おいっ、二宮!」

相葉ちゃんの慌てる声が聞こえたけど、
助ける余裕は全くない。

お互いに何とか切符を買い、
必死に階段を上って電車に乗り込む。

「座ってろっ!」

松本を放り投げるように座席に座らせる。

「二宮、危ないっ!」

ズルズルと横に倒れ込んでいく二宮を
自分の方に引き寄せ支える相葉ちゃん。

「へへっ、しゅみましぇん」

「何やってんだよ」

言葉では迷惑そうにしてるけど、
相葉ちゃんは嬉しそうに頭を預ける
二宮の髪を優しく撫でる。


トンッ…


重みを感じ目線を少し下げると、
俺の肩で寝ている松本の顔が見えた。


相葉ちゃんの気持ちも
わからなくは……ないな。


俺は松本の髪を優しく撫でた。

撫でる心地よさと電車の揺れに、
いつの間にか俺の瞼は閉じていった。


身体がユサユサと揺さぶられる。

「ぅ……ん」

「お客様、終点ですよ」

その言葉にビクッと身体が反応した。

「おいっ、起きろ!」

「ぅーん……なに?」

相葉ちゃんは呑気に目を擦る。

「寝過ごした!」

「えっ?マジ?」

俺たちは慌ててまだ力の入らない
松本と二宮を支えながら電車を降りた。

見上げる電工掲示板には
次に到着する電車の案内はない。

俺たちはとりあえず駅を出た。

そして目の前に広がる光景に
足を止めざるを得なかった。

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