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素晴らしき世界

第27章  勝手に挑戦、受けて立つ【交流戦第二試合】

キラキラと輝くネオンを見つめる。

「これって……」

「ホテル街だね」

相葉ちゃんの言葉に
俺の見ている景色に間違いはなかった。

「なぁ、金持ってる?」

「タクシーで帰れるお金はない」

俺の財布の中身も相葉ちゃんと同じ答え。


選択肢はひとつしかなかった。

目の前のホテルに向かって俺たちは歩いた。


何故か無言で……変な緊張感が漂っていた。


そして部屋を取り別れると、
俺は一目散にベッドに向かった。

「ここに寝……うわっ!」

取りあえず松本だけを寝かそうとしたら、
足が絡まって俺も一緒に倒れ込んだ。

「いってぇ……」

そして、重いっ!

松本が俺の上に倒れ込んでいる。

「おいっ、退け!死ぬっ!」

必至に肘で松本の脇腹を攻撃した。

「痛いっ、痛いよ~」


痛いのは俺だっつーの……


何度目かの攻撃を食らわしたところで
背中の重みが無くなった。


はぁ……助かった。


クルっと体制を正面に戻すと、
俺を見下ろす松本が目に入る。


嫌な予感しかしない……


「お~のせんぱぁ~い」

「うげっ!」

嬉しそうに微笑みながら
手を広げて俺の胸に倒れ込んできた。

「お~のしぇんぱい」

じゃれる仔犬の様に、
俺の首元に髪を擦りつけてくる。


俺……感覚がおかしくなっているのかな?


いつもと違う松本の
雰囲気と行動が可愛くて仕方がない。


俺と違って仕事でもいちいち熱くって
ウザいヤツだと思ってるのに……

酔っぱらって俺に絡んで
面倒くさいヤツだと思っているのに……


何故かほっとけない。



俺……翻弄されっぱなしだな。



「本当のお前はどっちなんだ?」

ポンポンと松本の頭を優しく叩いた。


「お~のしぇんぱい」

松本が身体を起こして俺を見下ろす。

「お~のしぇんぱいは……
どっちの俺が……好き?」

途中で回っていなかった呂律は
元に戻っていた。


けど、そんな事どうでもよかった。


目を潤ませながら
小首を傾げて俺に問いかける。



その姿は今まで出会った男性……

いや、女性の中でも一番可愛かった。



「どっちだと思う?」

俺は髪を指に絡ませながら撫でた。

「うーん、これからの俺かな?」

そう言うとゆっくりと松本の顔が近づいてきて
ふっくらとした唇が俺のそれと重なった。

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