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素晴らしき世界

第28章 勝手に挑戦、受けて立つ【交流戦第三試合】

グラウンドではバッティング練習の真っ最中。

俺はそれを横目に、
端のピッチング練習へと向かう。

投げやすいように、
ピッチャーマウンドを足で整える。

「どうします?座りますか?」

「うん、お願い」

キャッチャーがしゃがみ込むと、
ミットを前に構えた。

俺は帽子の鍔を掴むと、深く被り直した。


よし……いくぞ。


セットポジションから、振りかぶってボールを投げた。


パンッ…


捕球音がグラウンドに響き、
構えた場所にボールは吸い込まれる。

「ナイスピッチング」

投げたボールは俺のグローブへと戻ってくる。


パンッ…

再びグラウンドに響いた捕球音。


でも俺の手にはボールは握られている。


「ナイスピッチング」

そしてボールは隣に立つ人物へと投げられた。


セットポジションから繰り出される投球に
俺ほどのスピードはないけれど
緩急をつけたピッチングとコントロールには
いつも驚かされる。


そして込み上げてくる悔しさ。


再びセットポジションを取り、
キャッチャーミットに向かってボールを投げる。


パンッ…パンッ…

交互に鳴り響く捕球音。



俺の後に捕球音を鳴らすのは……二宮。



ランニングにしても……

ピッチングにしても……


二宮の持久力は凄いし、何より力の使い方が上手い。


俺はいつも全力だから、スタミナが切れも激しい。


俺も二宮もキャッチャー以外の
ポジションを守ることはできるが
メインはピッチャー。


絶対にこの場所は譲れない。


そう思っていても1年の入部の差を
二宮がどんどん詰めていく。



負けたくない……



二宮の存在と今まで無かった『危機感』が
俺をレベルアップさせた。



後輩だけど、二宮は最高のライバルだ。



今日は総体のレギュラー発表。

俺にとっては最後の夏。


俺の中で勝手に多くの対決を二宮としてきた。

負けたことは一度もない。



けど今日が大一番の対決。



ピッチャーとしての実力は悔しいけど……ほぼ互角。


けど、絶対にエースナンバーは渡さない。

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