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素晴らしき世界

第29章 夢か幻か

「ニノ?」

「見ちゃダメッ!」

どんな顔をしているのか気になって
後ろを振り返ろうとしたら速攻で拒否される。

「一回しか……言わないから、
ちゃんと……聞いてよ」

「う…ん」

ニノの心臓の鼓動が俺の背中に伝わる。

コンサートでは翔さんに次いで、
心拍数は落ち着いていたのに
今は早いリズムで鼓動を刻む。


緊張してるの?

ニノが俺に何かを伝える為に?


そしてニノが抱きついているこの状況。


それって……

それって……


期待しても……いいんだよね?



「俺……相葉さんが……好き」



期待した言葉が、
ニノの口から発せられて俺の耳に届いた。


人ってあまりにも嬉しすぎると、
リアクションなんて出来ないんだ。


そして俺の頭の中は昔の記憶を流し始めた。









俺はJr.の頃からずっとニノが好きだった。


最初は友達としての好きだって思ってた。


一緒に過ごすうちに
ニノが隣にいるのが当たり前になって、
俺がニノの隣にいるのが当たり前になった。


隣にいないと寂しくて……

誰かがニノの隣にいると無性に腹が立った。


『俺のニノなのに……』

心の中で呟いた時に気がついた。



俺の『好き』は友達としてではないって……



でもその『好き』はすぐに封印した。


だって俺は『男』、そしてニノも『男』


一方が異性じゃない。


男と女に友情は成立する?しない?

それって異性だから生じる疑問だよね。


男と男に恋愛は成立する?しない?

……愚問だよね。


だから俺が自然にそばにいる方法はひとつ。


『恋愛』にとって1番邪魔である
『友情』を極めること。


俺がニノの『1番の親友』でいること。

そしてニノも俺が『1番の親友』であること。


皮肉だよね……


俺の抱く『好き』から1番かけ離れた
ポジションがニノの1番近くにいる方法なんて。

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