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素晴らしき世界

第29章 夢か幻か








「ちょっと相葉さん、相葉さん!」

ニノの呼ぶ声と揺れる身体に
いつの間にか暗くなっていた視野が
徐々に明るくなっていく。

「どんな夢見てたのよ」

俺の目に映ったのは苦笑いを浮かべるニノ。

「ゆ……め?」

「はっ?何言ってんの。
グーグー寝てたでしょーが」

ドスンとソファーに腰を下ろし、
中断していたゲームを再開させた。


ニノの言う通り、本当に夢だったみたいで……

今は俺の家じゃなくて、楽屋にいる。


そして夢で俺を見つめていた琥珀色の瞳は、
ゲーム画面が独り占めしている。


「なんっすか?」

カチカチと聞こえていたボタンの操作音が止まる。

「ジッと見られてると、
集中できないんですけど……」

「あっ、ごめんごめん」

夢見心地だった俺を振り払うように、
パンパンと頬を叩いてシャキッとさせた。

「ところで……
一体、何の夢を見てたんですか?」

「えっ?」

パタンとゲーム機を閉じるけど、視線は下のまま。

「何か寝言……言ってましたよ」

「ねっ、寝言!」

ポツリと呟いたニノとは対照的に、
俺は盛大なリアクションをしてしまった。


ちょっと俺、何を言ってたの?

夢の中で名前とか言ってたっけ?

それ、本人に聞かれてるって……

ヤバいじゃん!


「何か嬉しそうに笑ってましたよ?」

パニックに陥る俺にニノは
さらに追い打ちをかけてくる。


そりゃ……ね?

大好きな人から告白されたんだから、
笑顔になるに決まってる。


「あなたの事だからきっと、
好きな人でも出てきたんでしょ?」

ようやく顔を上げて俺を見たニノが
口角を上げてニヤリと笑う。


さすがニノ、察しがよろしいようで……


「ほら、どんな夢か聞いてあげるから……」

「いっ、嫌だよ!」

「いいじゃん、教えてよ!」

「無理だって!」


俺が夢で喜んでるの知っているニノに、
『ニノに告白された夢』なんて言えないよ……

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