素晴らしき世界
第29章 夢か幻か
「相葉さん?ちょっと、大丈夫?」
身体が揺さぶられ力が抜けていくと、
滑るような感覚がした。
「ちょっと、危ないっ!」
「えっ?」
声を上げた瞬間、
俺の身体は温かい液体の中に沈んだ。
「げほっ、ごほっ」
「何やってんの……」
むせて苦しむ俺の背中を乱暴に擦る。
「遅いと思って覗いてみたら……
こんなところで寝てたら倒れますよ」
『寝てた』という言葉に、
さっき見ていたのは夢だと思い知らされる。
夢の中で夢を見るってなんだよ……
幸せな夢だった分、
相当なガッカリ感が俺を襲う。
「ちょっと……聞いてる!?」
その上、現実のニノは不機嫌で当たりがキツイ。
夢の中の優しい和也はどこですか?
「ごっ、ごめん」
ただただ平謝りをするしかない俺。
あぁ、これが現実だ。
「しっかりしてくださいよ」
でも……待てよ?
最初の夢も2度目の夢も、
怒っているニノは出てきている。
俺は浴室から出て行こうとする
ニノの腕を取った。
「えっ?なんですか?」
二度あることは三度あるって言うよな?
もしかしたら……これも夢?
確かめようと思って
手を掴んだまま立ち上がると、
のぼせていたのか足がふらついた。
「うわっ!」
「ちょっ……相葉さんっ!」
俺はニノの手を掴んだまま、
バシャンと飛沫を立て浴槽へと逆戻り。
ニノも引きずり込み、
浴槽へとダイブすると俺の膝に跨がり着地。
「この……あいばかぁぁぁぁ!」
可愛い手が俺の頭に鉄槌を下した。
「痛ぁぁぁぁぁぁ!」
この痛み……夢じゃない。
「もう……最悪!
びちょびちょじゃないですか」
「ごめ……」
ニノが俺を見下ろすと、
濡れた髪の先から……
そしてシャープな顎の先から
ポタポタと雫が俺の肌に落ちる。
その姿が妙に色っぽくて、
思わず頬を手で包んだ。
「あっ、相葉……さん」
戸惑っているのに……
夢じゃないのに
俺は顔を近づけて唇を重ねた。