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素晴らしき世界

第5章 家族ゲーム

ついに運命の日曜日がやって来た。

朝からそわそわしている母さんを見るのは
嫌だったので和と遊びに出掛けた。

待ち合わせ場所で待っていると和が来た。

和「今日、デートじゃないの?」

「それ、夕方から」

和「そうなんだ。暇してたから助かった」

「で、どこ行く?」

和「買い物付き合ってもらっていい?」

「てっきりゲーセンかと思った」

和「たまには違うところもね?」

鼻の頭を指で擦った。

嘘をつくとその癖が出る。

「バレバレだよ和。
ホントの理由はなに?」

すると和は照れながら

和「……今度、
遊びに行くから服買いたくて」

「最初から言えばいいだろ」

和「だって……」

元々、男らしいと言うより可愛い系男子。

彼氏ができてからは、
その可愛さに拍車がかかってる。

恋する乙女は可愛くなるのかな……

和「ちょっと、潤」

「ごめんごめん、ボーッとして。
お詫びに服、選んでやるよ」

和「ラッキー。潤、センスいいから助かる」

俺たちはショッピングモールに出掛けた。

お昼前だったので早めのランチして
和の服を選んでいたら、
夕方に差し掛かろうとしていた。

「そろそろ帰るわ。和はどうする?」

和「俺も帰る。人に酔ってきた」

俺たちはショッピングモールを後にした。

和「ねぇ、何かあった?」

和が別れる直前に心配そうに尋ねる。

「えっ?なんで?」

和「これからデートなのに、
楽しそうじゃないから」

やっぱり和にはバレてたか……

「久しぶりに会うから緊張してるのかも」

笑いながら誤魔化した。

和「可愛いところもあるんだね」

「うるさい」

和「じゃあ、デート楽しんできてね」

和は手を振りながら帰っていった。


家に帰ると母さんが
お洒落な服に着替えていた。

「お帰り、潤。これに着替えてね」

母さんがスーツを差し出した。

「ラフな格好ダメなの?」


どこに行くかなんて、もう知ってる。

スーツを着た方がいいってことも。


「ほら、もう時間ないから
文句言わず着替えて」

「わかったよ」

俺は急いで着替えて
母さんと一緒に家を出て、
車に乗り込む。

車を停めて待ち合わせ場所のお店に向かうと
入り口前に立っている人が、
こちらに向かって手を振った。

俺は上げようとした手をグッと押さえた。

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