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素晴らしき世界

第30章 僕らの48日間

コンコン…


騒がしい後輩が帰った後、
静けさに包まれた楽屋に再び響いたノックの音。

「はーい」

変わらず翔ちゃんが返事すると、
ゆっくりとドアが開いた。

「挨拶させてもらっていいですか?」

開いた隙間から男の人が
顔だけ覗かせて俺たちの様子を伺う。

「はい、大丈夫です」

その返事でドアがしっかりと開き、
普段入ってくる事のない匂いが楽屋を漂う。

「失礼しまーす」

ぞろぞろと入ってきたの乃木坂さん。


人数……多いっ!


「本日はよろしくお願い致します」

キャプテンの桜井さんの言葉の後、
一斉に俺たちに頭を下げる。


おっ?

俺まだちゃんと名前、覚えてるじゃん。


去年紅白の司会をするにあたって、
必死に勉強して名前を覚えた。

AKB関連のグループはメンバーが多いから、
名前と顔を一致させるのが大変だった。


「こちらこそ……宜しくお願い致します」

翔ちゃんの言葉に、
俺たちも立ち上がり頭を下げた。


滅多にない楽屋の光景。


普段、女性アイドルグループが
挨拶に来るなんて絶対にない。


まぁ、今回はコラボがあるからね?

色々と新たな取り組みも必要ってことみたい。


「二宮さん、大みそか……
紅白歌合戦もよろしくお願いします」

「いえ、こちらこそよろしくお願いします」

ニノがペコリと頭を下げる。


俺も去年のこの頃から、
そんな挨拶を受けるようになった。

紅白出演者に出会う機会が多い大型歌番組。



自分が思うのと、人から言われるのは違う。



挨拶を受けるたびに『司会するんだ』って
実感してめちゃくちゃ緊張した。

だって、今も思い出しただけで
心臓の鼓動が早くなるくらいだから……

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