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素晴らしき世界

第30章 僕らの48日間

ゆっくりとドアを開けると、
部屋を出た時と同じ
規則正しい吐息が聞こえる。

俺は起こさないように、
そっとベッドの中に入り込んだ。

ニノはあのまま意識を手放し、寝てしまった。

身体を綺麗にしても起きなかったので
スエットを着させて俺はシャワーを浴びた。

「疲れてるんだな」

って、余計に疲れさす事をしたのは俺か。

でも久しぶりに何も考えず
熟睡してるんじゃないかな?と、
良いように捉えておこう。


そっとニノの髪を撫でる。

「ぅ…ん」

モゾモゾっと動くと、
仰向けだった身体はこちらを向いた。

俺はニノの頭を肩の辺りに引き寄せた。

吐息が肌にかかって何だかくすぐったい。


でもそれはニノが今、
俺のそばにいるって証拠。


包み込むように華奢な身体に腕を回した。


食べても太らないんだよな。

もっと、スナミナのあるもの
作らなきゃダメだな……


体調面ではフォローできてると思う。


それじゃ、年末を乗りきれないから……



じゃあ、精神面は?



ねぇ、俺はニノの支えになってる?

ねぇ、俺はニノの役に立ってる?


そんな問いかけに応えるかのように、
ニノが俺の服の裾をギュッと掴む。


何か、俺ばっかりが
励まされていると言うか……

救われている気がする。


「ありがとう」

前髪を指で掻き分けると、
額にチュッとキスを落とした。


俺が家に転がり込んでからも
何も変わらないニノ。


もし、いつか……

ニノが苦しくて辛くて
どうしようもなくなった時は手を伸ばしてね?

俺は必ずその手を取るから。


でも、俺はわかっていなかった。

ニノが手を伸ばすはずがない事を……

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