テキストサイズ

素晴らしき世界

第30章 僕らの48日間

どうにか時間稼ぎをしようとしたって、
車が出てしまえばここにいる理由はない。

重い足取りでエレベーターに乗ると、
俺の気持ちとは反対に素早く上へと
連れて行ってくれる。

受付クロークで歩みを止められることもない。


「はぁー」

溜め息が止まらない。

何度、短い楽屋の道のりを
立ち止まっただろう。


その度に大忙しに廊下をかけぬ

そしてようやく……違う。


とうとう着いてしまった楽屋。



よし……行くぞっ!



「相葉ちゃん、何してんの?」

「う…っ」

心の中で気合を入れて目の前のノブに
なかなか出せなかった手を伸ばした瞬間、
リーダーの声が後ろから聞こえた。

「どうしたの?口なんか押え……
えっ?ナニナニ?どこ行くの?」

俺は反対の手でリーダーの腕を掴むと、
自販機のある所まで引っ張っていった。

「もう、脅かさないでよ!」

「脅かすつもりはなかったし……
ってか、ずっと後ろにいたんだけど?」


全く気がつかなかった。

最近、気配の無さが凄すぎる。


『忍びの国』の撮影で磨きがかかったのか?


「何か……あった?」

ニヤニヤ聞く姿はきっと何もかもお見通し。

「あったも何も……」

俺は近くにあったベンチに力なく腰を下ろした。

「まぁ、タイミング悪いよね」

俺の隣に腰を下ろすと、
ポンポンと軽く頭を叩いた。

「悪すぎない?俺、何かした?」

「まぁ、この時期は仕方ないよ。
誰かしら犠牲になるからね」


遠くを見つめる瞳は何を思ってる?


仕方がない事だって誰しもわかってる。


でもその中で俺たちは、
いくつもの苦難を乗り越えてきたんだ。


それでもついてきてくれた
ファンの方と一緒に……

ストーリーメニュー

TOPTOPへ