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素晴らしき世界

第30章 僕らの48日間

「おやすみー」

ハイテンションのニヤけ顔のJと
ヒソヒソ話をするリーダーと翔さんは
部屋を出ていった。


「もう……下手くそか!」

下を向く相葉さんの頭を思い切り叩いた。

「イテッ!」

目に涙を浮かべているけど、
表情は緩み切っている。

「でもみんな帰ってくれたじゃん」

「そうだけど……うわっ!」

待ってましたとばかりに俺に抱きついてきた。

「やっとギュって出来る」

俺の首元に顔をグリグリしながら埋める。

「やめっ、くすぐったい」

「嫌、やめなーい」


まぁ、今日ばっかりは許してやるか……


いつもとは違うシャンプーの香り漂う
サラサラした黒髪を優しく撫でた。


「ふふっ、気持ちいい」

俺に甘える相葉さんも珍しい。


あの記事が出てから
初めてファンの前に立った。


きっと不安だったに違いない。

でもそんな事を相葉さんや、
俺たちが言う資格はない。


真実であろうとなかろうと、
あの記事をどうとらえるかは
ファンの方々次第。


全て受け止めなきゃいけないんだ。


何度もステージ裏で
深呼吸を繰り返す相葉さんに、
俺ですらどう声をかけていいか
わからなかった。


ホームなのに……アウェイの空間。


この中に飛び込む恐怖を
相葉さんは拭い切れないでいた。


でもね……

開演前に広がった景色は
相葉さんに力を与えれくれた。


開演前、ゆっくりと緑に染まっていく会場。

ファンの方々が相葉さんの
誕生日をお祝いしてくれた。


その瞬間、相葉さんの表情が変わったんだ。


「綺麗だね」

Jの言葉に俺たちは笑って頷いたんだ。


そしてコンサート開演。


ステージにはいつもの笑顔溢れる
『相葉雅紀』がいた。

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