テキストサイズ

素晴らしき世界

第30章 僕らの48日間

「それは……ってか、温かい飲み物
ひとつでも出してくれません?
ホント、寒かったんですから!」

ズカズカと俺の隣を通り過ぎると、
勢いよくソファーへと腰を下ろした。

「はいはい、わかりましたよ。
何で訪問者が偉そうに……」

「何か、言いました?」

背もたれから首を反らせて俺を見つめる。


確実にここに来た理由を誤魔化されたけど……


「いえいえ、何もありませーん」

俺はキッチンに向かい、
コーヒーメーカに水を注ぐと
スイッチを入れた。


「翔さん、大丈夫でした?」

「うん、何とかね。
先輩もフォローしてくれたし……」

「そっか、良かった」

心からの安堵の声が聞こえた。


紅白の時の翔ちゃんを見てれば当然だ。


翔ちゃんは必死に笑顔を取り繕って、
無理しているのは誰の目にも明らか。

テレビを見ている人でさえ異変に気がついた。


それでも翔ちゃんは
ケガを表沙汰にしようとしなかった。


ケガが公表されると、
否が応でも注目は自分に向いてしまう。

ニノの紅白の司会に
水を差すような事はしなくない。


メンバーだからこそ、
痛いくらいにその気持ちを感じた。


きっと誰よりもニノが……


「良かったら見る?カウントダウン」

「えー、いいですよ」

その言葉と同時にスマホでいつもしている
ゲームの音楽が聞こえてきた。

「いいじゃん、見ようよ」

マグカップをニノ前に置き、
近くにあったレコーダーの
リモコンを手に取った。

「いや、いいって……」


俺が紅白で出演できなかった時は
『相葉スカジャン』をメンバーが着てくれた。


今年は……ね?


「ほら、年明け早々から
ゲームしてるんじゃありませーん」

パッとスマホを取り上げた。

「ちょっ、やっとゲームが……」

「うるさーい!ほら、見るよ?」

取り上げようとするニノの横に座ると
後ろからギュッと抱きしめた。


これが大人しくさせるには効果覿面だからね?

ストーリーメニュー

TOPTOPへ