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素晴らしき世界

第30章 僕らの48日間

えっ?

えっ?えっ?

えぇぇぇぇぇ?


パンチの一発は覚悟してたのに、
予想に反して大人しく胸の中に収まるニノ。

自分で抱きしめたのに、
なぜか緊張して俺も固まってしまった。

「あの……さ」

「はっ、はい!」

お面が邪魔して少し籠ったニノの声。

驚く音量でもないのにピクっと身体が震えた。

「お正月は……どうするの?」

「えっ?正月?」


ニノはわかりやすい俺の動揺をスルー。

いつもなら……って、
来た時だって動揺した俺をクスクス笑ってた。


でもニノは俺の質問返しに、素直に頷いた。


「正月は……実家に帰る。
弟も家族で帰省するって言ってたし」

「あとは何か予定入れてる?」

「そう言えば伊野尾が
『ご飯しましょう』って言ってたかな?」

「そっか……ってか、苦しっ!このお面」

腕を突っ張って俺から離れると、
被っているお面をラグの上に投げつけた。

「あぁぁぁ、ニノのお面が!」

「あんなの要らないでしょ!だって俺が……」

威勢の良かったニノの声が途切れたので
お面から本人に目を移すと、
耳を真っ赤にして口を手で押えていた。


ははーん、そういう事……ね。


「だって俺が……なに?」

わからないふりして
小首を傾げて可愛いく聞いてみた。

「あいバカのクセに」

バカって言われたって痛くも痒くもない。

「ねぇ、教えてよ」

「うっ、うるさーい!」


………痛かった。


恥ずかしさが力に変換されて頭に衝撃を与えた。

「手加減しろよぉ」

「力加減バカ男に言われたくありませーん」

すっかり調子を取り戻したニノ。


さっきは何だったんだろう……


「ねぇ、疲れたからお風呂入りたい」

「はぁ?」

「ほら、コーヒー飲んでる間に用意してね」

目線をテレビに戻し、
カウントダウンの続きを見始めた。

「へーい、わかりましたよ」

大役を終えたニノの為、
最高の風呂の用意を始めた。


って、温泉の素を入れるだけだけどね。

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