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素晴らしき世界

第30章 僕らの48日間

【帰省中】


「まさきぃ、あそぼー」

カルタを持って駆け寄ってくる可愛い姪っ子。

昔は泣かれたり睨まれたけど
今では俺の事が大好きだ。

「こら、雅紀兄ちゃんでしょ!」

「いいよ、気にいないで」

「すみません」

赤ちゃんを抱っこしながら、
ペコリと俺に謝る。


弟夫婦にまた家族が増えた。


「抱っこしたいなぁ」

「ふぇっ…」

ツンツンと柔らかいほっぺを突くと、
今にも泣きそうな顔をする。


やはり幼い時期は懐いてはくれないみたい。


「こら、泣かせるじゃないよ。
おじちゃん、怖いですねぇ?」

「おじちゃんじゃねーし」

孫にデレデレのかーちゃんが抱っこすると、
途端にご機嫌になる。

「今のうちにたくさん遊んでもらえよ」

「うん!」

正月番組を見ながら
ビールを飲む佑介とおやじ。


大型連休があるのは正月ぐらい。

ましてやお嫁さんは
いつも2人の面倒を見ているから大変だ。


今日くらいは弟夫婦を休ませてあげたい。


弟には感謝してもしきれない。

俺が長男としてしなければいけない事を
全て佑介が引き受けてくれた。


店を継ぐ事。

孫を見せる事。



そして今の俺を理解して、
受け入れてくれている両親にも……



俺がデビューすると実家って事で
『桂花桜』に訪れるファンも少なくない。

騒いで店に迷惑をかけた事だってきっとある。


でもそんな事を聞いた事はなくて……


『雅紀のお陰で店が繁盛している』って
おやじは感謝してくれている。


そして和也と付き合っている以上、
孫を親に見せる事は出来ない。

もちろん結婚も出来ない。


でもそんな俺を急かす事はなくて……


『今、雅紀が幸せならそれいい』って
かーちゃんは笑ってくれる。


俺は周りの人に恵まれている。


トゥルルッ…


「ねぇ、かのじょー?」

「んー、大切な人かな?」

久しぶりにスマホの音を鳴らし、
俺の幸せを支える人からの着信を取った。

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