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素晴らしき世界

第30章 僕らの48日間

「もしもし」

ちょっとだけ声が震えた。

突然の電話に少し緊張している自分に
苦笑いを浮かべる。


ここでの通話はまずいな……


姪っ子に『ごめんね』と
謝りながらリビングを出た。

『今、電話ダメだった?』

俺の謝る声が聞こえたみたいで、
受話口からの声に申し訳なさが伝わってきた。

「ううん、大丈夫だよ。どうした?」

『今、実家だよね?』

「うん」


何で知ってるんだろうって思ったけど……

そう言えばニノが紅白終わりに
家に来た時に予定を聞いてきたっけ。


『今日……帰る?』

「えっ…と、弟たちが明日まで
実家にいるから俺も明日までいるかな」

珍しく俺のプライベートの予定を聞くから
少しだけ戸惑ってしまった。

『……そっか』

返事する声のトーンが
さっきより低くなった気がした。

「何かあったの?」

『ううん、別に』

返事のトーンはいつもと変わらず。


気のせい……だったのかな?


「ニノは何してるの?」

『別に……いつも通り、
地球の平和を守ってる』

「ぷっ、カッコ良く言うなよ。
いつもとかわんねーじゃんか」

『別に正月だからって
正月らしいことする必要ないでしょ』

「まぁ、そうだけど……」

『…………もいないし』

「えっ?ごめん、何て言った?」


電波の影響なのか……

くぐもった声で前半部分の言葉を
聞きとる事が出来なかった。


『いいよ、大したことないから』

「何なんだよ、気になるじゃん」


「まさきー、まだぁ?」

開いたドアから可愛い顔がぴょいと出てきた。


「ごめん、もうちょっと待って!」

『ほら、彼女が待ってるんでしょ?』

「彼女じゃねーし!」

『じゃあね、彼女とお幸せにー』

「おい、ちょ…」

俺の言葉を遮ったツーツーという機械音。


何なんだよ……


結局、ニノが何で電話してきたのか
わからずじまいだった。

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