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素晴らしき世界

第30章 僕らの48日間

【後輩と食事中】


「相葉く~ん」

「何だよ……離れろっ!」

絡みつく伊野尾を何とか
引き剥がそうとするが一向に離れない。

「もう、面倒くさいわ」

俺は残っていたビールを飲み干した。

「兄貴、おかわりいりますか?」

「お願い。お前も遠慮なく頼めよ」

「ありがとうございます!」

それに比べて松崎は本当に気が利く。


後輩の中で松崎が一番一緒にいるし、
一時期は週4から5のペースで会ってた。

ミニスカサンタの格好で
誕生日を祝ってくれた事もあったな。

そりゃ、気遣いも完璧だよな。


それに比べて、
俺の膝の上でいつの間にか寝ているコイツ。


「おい、起きろ!」

「へへっ」

ツンツンと頬を突いたって、
ニカッと笑ってまた夢の中に戻っていく。


甘えっぽいところや、
テレビで見せるポンコツ具合が
母性本能を擽るのか?


可愛いなんて言われたりするけど、
俺に言わせてばニノの方が何十倍も可愛い。


俺にとって今の伊野尾の存在は……


「重いっ!」

膝からスライドさせて横に寝かせた。


「お待たせしました!
ビールと烏龍茶になります」


……烏龍茶?


「どーぞ」

俺の前にビールを置くと、
松崎は烏龍茶を少し口に含んだ。

「あれ?今日、飲んでないよね」

「はい、もうすぐ舞台稽古が始まるんで」

2月から始まる
SHOCKのキャストに選ばれた。


立ち回りなど毎回ハードだから、
身体づくりもきっと大変だろうな……


「今から緊張しますよ」

「お前なら大丈夫!」

身を乗り出してパチンと肩を叩いてやった。

「はいっ!頑張ります」

「じゃあ、舞台の成功を願って……」

俺はグラスを持ち上げて前に出すと、
松崎も意図をくみ取ってグラスを持った。

「「カンパーイ」」

「うわっ!ナニナニ?」

大きな声にビックリして飛び起きる
伊野尾の姿に俺と松崎は吹き出して笑った。


ポケットで震えるスマホに気づかずに……

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